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20代日本人女性が語る、タイ・バンコク現地採用の現実と未来【後編】

理想と現実のギャップに苦しみながら、前進し続ける川口さん(仮名)。

そんな彼女は、現地採用の先にある未来をどう見ているのか。

日本より日本な狭い村社会にうんざりすることも

―(在留届未提出者を含めると)10万人以上の日本人が住んでいると言われるタイですが、日本人コミュニティとはどう関わっていますか?

タイに来たばかりの頃は、当然誰も知り合いがいなかったので、ちょっと寂しかったり、単純に時間がたくさんあったりしたので、積極的に絡みにいきました。

生まれ年や同世代で集まる交流会、趣味サークル、婚活イベントとか、バンコクって日本人がギュッと集まっている町なので、本当に色んな集まりがあるんですよね。

ただ、皆さん自分の意思で海外に出てきているだけあって、良くも悪くもクセの強い人が多くて(笑)。
ある程度友達が出来てからは、○○会みたいなものには参加しなくなりましたね。

それと、日本人が増えすぎて、いわゆる村社会みたいになっている状況も気になります。
駐妻(駐在員に帯同する妻)さんからは、旦那さんの役職や稼ぎで形成される“駐妻ヒエラルキー”があるという話も聞きますし、噂話も瞬く間に広まります。

―実際、日本人絡みで何か嫌な目に遭ったことがあるんですか?

私は気になりませんが、中には現地採用を見下す駐在員もいて、会話が「駐在ですか?(現地採用ですか?)」からスタートする人もいます。
たぶん、この辺は私たちより男性の現地採用の方が気分を悪くすると思います。
日本で例えると、「いい歳してバイト?(笑)」って言われてるような印象を受けますから。

でも、私の場合は、「将来に何の保障もないけど、女の子なのに大丈夫?」っていう意味合いも含まれているような気がして。
だから、嫌な目というか改めて考えさせられる瞬間かなと思います。

毎日は楽しいけど、現地採用は将来の不安が常に付きまとう

―では、話の流れで将来についても伺いたいと思います。今後も現地採用としてタイで生きていくんですか?

期間はまだ決めていませんが、もう少し頑張ったら日本に帰ろうと思っています。
やっぱり同級生が結婚するたびにめちゃくちゃ不安になりますし(笑)。
私、タイにいていいのかな?って。

実際、日本の住民票を抜いてきているので、年金は支払っていませんし、女性としての幸せだけじゃなく、もっと先のことも考えてしまいますよね。
※海外在住者は国民年金の任意加入が可能。

あと、保険で言うと、自分の健康にもすごく気を使います。
一応、会社の福利厚生として医療保険に加入していますが、タイの外国人向け病院の治療費ってとんでもない金額が請求されるんですよ。

以前知り合いから、2日入院しただけで9万バーツ(約32万円)掛かったと聞いて、さすがに震えました。
30代、40代と進んでいって、どこかで身体に異常が出たらどうしよう?と本気で考えますよね。

―よく言われる「日本社会とのズレ」みたいな不安はありますか?

そうですね。
なんだかんだ言っても、タイは働きやすく暮らしやすい環境なので、この緩さが染みつくと、日本社会へ復帰できる気がしません(笑)。

興味があるなら挑戦した方が良い、でもリスクやデメリットはきちんと整理する必要がある

―では、かつてのご自身と同じようなタイ生活を夢見る若者に向けて、何かアドバイスがあればお願いします。

誰に聞こうと、何を読もうと、どうせ来るまでリアルは分からないんで、興味があるならとりあえず来るしかない!(笑)。

男女問わず、歳を重ねていくと、どうしても腰が重たくなると思うので、逆に言うと、この思い立った瞬間しかチャンスがないのかもしれない。
ただし、自分なりにデメリットやリスクみたいなものは整理した方がいいです。
20代って絶対貴重な時間ですし。

あとは、たとえ仕事であまり使わないと言われても、来る前に少しでもタイ語を勉強しておくと、タイ生活のスタートダッシュに成功できると思います。
やっぱりタイ語が話せないと、行動範囲やコミュニティが限られてしまうので。

あっ!大事なことを忘れてました。
小さいことを気にし過ぎると、ストレスで狂いますよ(笑)。
気長にやりましょう。

―最後に、あの時行動を起こして良かったと思いますか?

もちろんです!私は、タイに来て良かったと胸を張って言えます。
タイに来なかったら、最悪あのまま東京で潰れていたかもしれないし、アウェイな環境でも過ごせる強さは手に入れられなかったと思うので。

―非常に貴重なご意見です。タイ移住を考えている方は、ぜひ参考にして欲しいですね。本日はお忙しいところありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

もし、タイで現地採用としてチャレンジしたい場合、行動力はもちろんのこと、忍耐力や柔軟性も必要な能力ということだろう。

20代という時間をどう使うかは人それぞれ。
これは私見になるが、若くして海外に出た人間は、多角的な視点や広い視野、どんな状況にも合わせられる順応力を手に入れて帰国する人が多いイメージがある。

末筆ながら、タイで奔走する全ての現地採用者の更なる飛躍を切に願っている。

(聞き手・文:Hayabusa Jiro)